福岡県にある蜂須賀病院にて、松尾隆先生の診察を受けました。本当は、9月1日に福岡みらい病院での受診予定だったのですが、病院から、一方的な断りの電話が入ったため、また、拒否かよと思っていました。ところが、松尾隆先生本人から、蜂須賀病院に予約をしてくださいとメールが届いたため、予約をすることになりました。
思えば、この頃は、まだまだチック症(トゥレット症候群)が最悪のころで、なんとか有効な治療を見つけなければ、この苦痛から逃れることはできないからと、必死になって治療法を探していた頃でした。はっきり言ってしまえば、もう限界の状態でした。今も、その難病を持っていることに変わりはないのですが、奈良医療センターの開道先生の診察を受けることができたため、症状を大幅に抑えることができるようになり、回復の兆しが見えてきたところです。まあ、まだ初めて数週間なのですが、ここからは、なかなか良くなっていません。いろいろな呼吸法を試してみて、随分とマシにはなりましたが、今のところ、根治に至ることはできてきません。どうしても、口周りのチック(トゥレット)というものは根強く襲ってきます。もしかしたら、根治というものは叶わないのかもしれません。それでも、生活は、随分と楽になったし、自分の生活を今、取り戻しつつあります。
それで、松尾隆先生の受診についてです。とてもではないけれども、運転なんかできる状態ではありませんでしたが、随分とマシになったため、高速道路を使って、車で病院まで行きました。車を運転できっるようになったのは、つい最近です。若宮インターというところで降りて、そこからは、それほど遠くはありませんでした。マックのマップという経路地図を使って行ったので、それほど、迷いませんでした。車に取り付けていたソニーのカーナビは、病気がひどかったころ、土台が見事に折れてしまい、使えなくなっていました。あれ以来、ほとんど電化製品というものを購入していません。妻が、看病のストレス解消に電子ピアノなどを買っていましたが、そんなことを横目に、おとなしく病気の苦しみに耐えていました。
病院の待合室でも、重度チック症(トゥレット症候群)とわかる人は、いないかもしれないと思うぐらいに外では、不随意運動を抑えることができています。体の重さもありません。首を痛めたとき、最初は、頚性神経筋症候群の症状だけでしたが、かなり苦しい状態で、いつも顔色が悪かったそうです。これは、PANセラピーという整形外科の治療で短期の回復を果たしました。しかしながら、この治療方法を見つけるのに、随分と時間がかかりましたが、骨格ごと改善してくれるこの治療方法は、ほとんど回復不可能とされていた副交感神経を蘇らせてくれました。
名前が呼ばれ、松尾隆先生の診察室に入りました。チック(トゥレット )の動画を送っていたせいか、ちょっと驚いているようでした。
「止まってるいるじゃない。きれいな顔を見たのでびっくりしたよ。」
「治ったわけではないのですが、抑えることができるようになりました。この不随意運動は、チックらしかったので、チックの専門の先生に診てもらいました。その先生は、脳神経外科医なのですが、脳手術はリスクも大きいからと、今では呼吸法で治しているそうです。それで、呼吸法を取り入れることによって、症状を抑えることができるようになりました。でも、あくまで、治ったわけではないので、意識していないとすぐに出てしまいます。」
ということで、ちょっとチック症(トゥレット症候群)を出してみました。顔がかなり引きつる重い症状です。なんとか呼吸法で抑えています。普通の人には、この感覚ってわからないと思いますが、今は腹圧式呼吸という呼吸法を利用して、なんとか不随意運動が表に出ることを防いでいます。腹圧式呼吸というのは、開道先生に教えてもらった呼吸法ではありませんが、重なる部分も多かったし、それを始めてから、結構、調子が良いので、取り入れました。腹圧式呼吸法というのは、「奇跡の呼吸法」という本に詳しい方法が載っています。
「呼吸法で?それは、一番いいね。」
やっぱり、呼吸法で治るのっていいことなんだと改めて、思いました。ということで、松尾隆先生との診察は、終始、現在まで回復できた治療方法などの説明をして、先生がそれを聞くということを繰り返しているうちに時間になりました。松尾隆先生は、整形外科の視点から、口腔外科を考えてくださっていたのですが、なにせ、口輪筋や眼輪筋なども激しく動く症状なので、選択的コントロール手術で顔面筋の手術をするにしても、やはり限界があるようでした。それでも、私が送った動画を見て、いろいろと考えてくださっていました。診察が何度も先延ばしになったことは、良かったのかもしれません。チック(トゥレット)は、整形外科手術で治すより、呼吸法で治した方が良いようです。
それは、呼吸法という有効な方法が見つかったから言えるのであって、ちょっと前までは、切ってでもいいから、この恐ろしい症状を止めてほしいと思っていました。ネットにDBS手術に踏み切って良くなった海外の男性についての話が流れていましたが、あまりにも辛いから手術を決意したのだそうです。
これは、ジストニアなども含めた一般的な話ですが、海外では、DBS手術をするのに何年も待たされるそうです。日本の医療は、勤勉な医師によって支えられているとかで、半年とか待てば、DBSや熱凝固といった手術を受けられるということでした。開道先生から、DBSのリスクは十分教えてもらいました。そんな危険な手術をするのでさえ、願っても待たされたあげく、必ずしもうまくいくとは限りません。それも、一般的には、全身麻酔ではなく、局所麻酔下で意識のあるなか、頭に穴を開けて行う手術です。そんな手術でも、不随意運動の患者からしてみれば、何とかこの苦しみから解放してほしいと切なる思いでいっぱいなのです。何だか悲しくなってきます。
DBS手術後は、体内に機械を入れて生活しなければなりません。心臓のペースメーカーと違って、身体障害手帳の対象にすらならないそうです。そのうえ、体内に機械を入れるということは、感染症のリスクを背負わなければなりません。さらに、脳に電極を埋め込んで、不随意運動を電気でコントロールするのです。開道先生の診察を受けなければ、手術を決意してそうなっていたかもしれません。私のチック(トゥレット)は、誰から見ても重すぎるのです。こんな重いチック(トゥレット )になっただけでも奇跡的ですが、さらに良くなるということは、この症状を知っている人達からは、本当に奇跡だと思われています。
この重度難病になる人は、危険を冒してでも手術しか治療方法が残されていないという苦渋の選択に迫られることがあると思います。そして、あまりの苦しさに、かなりの期間を待たされてまで、この危険な手術すら、受けざるを得なくなるのです。だって、生活があり、家族を養う必要もあるから。手術が成功しても、感染症のリスクやら、機械の電池交換やらで、再度、手術を受けなければなりません。本当に悲しくなってしまいます。自分も下手をすれば、手術をしてもうまくいかずに、一生苦しむだけだったかもしれないのです。
松尾隆先生も不随意運動の恐ろしさは、十分ご存知のようで、これまで、そのような症状の方々を整形外科手術で助けてこられました。その優しい先生と話せて良かったかなと思います。松尾隆先生とは、終始、会話に終わり、治療にはつながりませんでしたが、やはり、チック(トゥレット )の治療は、呼吸法が一番と改めて思いました。幸い、開道先生のところには、全国から、チック(トゥレット )の患者が訪れるそうです。患者本位の先生は、治療方法まで、患者本位です。DBS手術をされていた頃でさえ、根治につなげる手術内容で、全身麻酔下でDBS手術を行う技術があるのです。
重度チック症(トゥレット症候群)で苦しんでいる世界中の方々には、まずは、呼吸法を試してみることをお勧めします。口呼吸を鼻呼吸に変えるだけでも随分と違うと思います。ヘビー級の重度チック(トゥレット)の私でさえ、生活を取り戻しつつある方法なのです。
松尾隆先生からは、後にメールを頂き、よかったねということでした。難病になったことは、人生最悪の出来事でしたが、よくなってきたので、ハンデを背負っていますが、社会復帰も果たして、少しずつでも良くしていきたいです。